個人が中国にプラスチック部品の量産を依頼した話2(受領編)

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個人で中国にオリジナルのプラスチックの部品を発注しています。前回のレポートはこちら。結論から言うと完成品を無事受けとることができました。受取までの流れをまとめておきます。

 

 

発注してから受領までは結構かかった

まず、前回の記事でDFMに対してOKの返事をしたのが6月11日(火)でした。

見積書に書かれていたスケジュールは、金型作成に12営業日、射出成型に3営業日となっていました。

足し算すると15営業日後には納品されるはずです。

まあ、営業日って言っても今回発注したA社さんの営業日がいつなのか分かりませんし、どこを起点にするのかもよく分かりません。仮に土日が休みでDFMの承認から15営業日だとすると7月2日が納期にでしたが、御覧の通り最終的に受領したのは7月19日になりました。

 

元々、スケジュールには余裕をもっていましたが、結果的にはそれで良かったです。(8月3日~4日のMaker Faire Tokyoには間に合いましたので…)

 

受領までの流れ

6月19日(水) 進捗連絡①

DFMの確認(6月11日)から約一週間後の6月19日(水)にA社の敏腕担当のチェンさん(仮)から画像付きで進捗の連絡が来ます。

送られてきた画像↓

おお!出来ている!

プロトラブズでは進捗の連絡とかは特にありませんでしたし、プロトラブズでは完成品が届くだけで、金型を見る機会はなかったので、実はプロが作った金型を見たのはこれが初めてでした。

僕は依然CNCフライス盤で金型を作ったことがあり、その時点で作り方はほぼ「想像」でしかありませんでしたが、ツールマーク(加工用の刃の跡)の付き方から察するに、大きくは間違っていなかったのか?…とちょっと答え合わせの様です。

A社はわざわざ進捗連絡をくれるなど丁寧さには感心しきりです。それにちゃんと連絡があると安心感が違います。

 

6月27日(木) 進捗連絡②

さらに約1週間後の6月27日(木)にも連絡があります。進捗もだいぶ進んでいるみたいでした。

キャビティ(溶けたプラスチックを流し込んでパーツの整形する穴)が2つ見えます。2つのキャビティの間にスプルー、ランナー、ゲートがあり、空気を抜くための穴もありそうです。ツールマークは綺麗に消えてしまいました。プロの技ですね。

加えて「最初のサンプル射出予定日(estimated first sample trial date)は一週間後の7月4日(木)になりました」という連絡もあります。

そしてここからは担当者がチェンさんからタンさん(仮)に代わります。

 

確認① 7月6日(土)

「最初のサンプル射出予定日」との連絡があった7月4日(木)を2日過ぎた7月6日(土)、サンプルの射出ができたら連絡があると思い込んでいましたが特なかったので、心配になって問合せてみます。

Hello, Mr.Chen(仮) and Mrs.Tang(仮)

I am sorry I guess you are so busy. But, is the first sample going well ?
I would be happy if you let me know the progress or schedule!

Thanks & Regards
Okamoto Tomohiro

すると、即座に「ちょうど30分前にサンプル射出ができたよ」との返事が返ってきて、↓の画像が添付されていました。「蕎麦屋の出前」という言葉が頭に浮かびますが、問い合わせるとすぐレスポンスがあるのでそんなに心配な感じはありません(途中の進捗も教えてもらっていますし)。

あとこの日は土曜日でしたがA社は稼働しているんですね。あれ?だとすると15営業日って…

↓送られてきた画像

「サンプルは10個で良いですか」という確認と共に「次の月曜日(=7月8日(月))に送りますね」という連絡があり、その連絡の通り次の月曜日にはFedEXの追跡番号が送られてきました。

 

サンプル受領 7月10日(水)

荷姿の写真を撮り忘れたのですが、10個のサンプルが5個づつグルグル巻きになった状態で小さなダンボール箱に入った丁寧な梱包で送られてきました。

中国の射出成型屋さんのパーツ(左)とプロトラブズのパーツ(右)。色が少し違っていてプロトラブズのほうがやや青みがかっているように見えます。また、左(中国)の方が少し太いのは僕が設計を変えたからで、間違いではありません。

中国のパーツもプロトラブズのパーツ同様、他のパーツと干渉することなくピッタリはまりました。

もし間違いがあると金型の作りなおしになり面倒な事になります。僕はこういう絶対にミスをしてはいけない肝心な所で凡ミスをしがちなので、まずは無事に出来上がっていることにホッとしました。

中央がエジェクタピンの跡。思っていたより目立ちません。プロトラブズの方がエジェクタピンの跡ははっきりしていました。あとDFMでヒケが発生するかも知れないとの事でしたがほとんどありません。

 

そしてゲートの跡はこちら。全然目立たないですね。プロトラブズではゲートは3か所ありましたがA社は1か所しかありませんので目立ちにくいです。やや設計を太くしましたので流れやすくなったのもあるかもしれませんが、A社のゲートの面積はプロトラブズの半分くらいの大きさでした。

材質は同じABSですがプロトラブズの方がごくごくわずかに硬い気がして、弾性が低い感じです。気のせいかな?くらいのレベルです。あとカドがプロトラブズの方がシャープな気がします。目で見ても分かりませんが、指でカドをなぞってみたときにほんの少し引っかかり方が違うような気がします。

全体的な見た目はプロトラブズと比べても全く遜色ありません。「製品っぽさ」という点においてはより良いんじゃないかとさえ思います。

 

サンプルOK連絡&量産費用支払い 7月11日(木)

そして翌日の7月11日にサンプルOKの連絡と量産費用の支払いを行います。タンさんからは「来週の月曜日(=7月15日)に量産したパーツを送るよ」と連絡がありました。すごくスピーディです。

 

確認② 7月17日(水)

発送予定日(15日)には連絡が有るかと思っていましたが、連絡はありません。

2日過ぎても連絡はないので確認してみます。

すると「昨日発送したよ」という連絡と、FedEXの追跡番号が送られてきました。確かにその追跡番号で調べたら前日16日に発送されています。

まあ元の約束は「月曜日(=15日)に送る」との事だったので正確には一日遅いのですが、でも聞けばすぐ対応してくれるので不安はありません。

 

量産受領 7月18日(木)

翌日には荷物が届きます。(つまり発送日からは2日)。深圳から岡山まで通関含めたったの2日で届きました。すごいな。

写真を撮り忘れましたが、箱の側面には「DON’T PRESS ME(押さないで)」と油性マーカーで書かれています。

今度こそ荷姿も撮影します。蓋を開けばパカッと。ダンボールは波が2重になっているタイプでガッシリしています。

 

シート状の緩衝材のを取るとダンボールで固定されています。

 

それを取ると再びシート状の緩衝材。

 

それを取るとこんな感じで並んでいます。隙間にも緩衝材。丁寧な梱包です。

次の段はこんな感じでみっちり。

 

数が合っているか頑張って数えます。僕の数え間違いじゃなければ12個予備が入っていたようでした。あと特に不良品なども見られませんでした。

 

 

海外の会社に、苦手な英語で注文するのは不安もありましたが、大成功といっていいんじゃないでしょうか。

ただ金型を作るのにお金がかかったので、同じ金型での2回目、3回目の追加発注分を受け取ることができて、初めて本当の意味で成功と言えますね。

事前にA社さんに確認したところ、今後の追加発注にはセットアップ料(SETUP FEE)とかもかからないとの事でした。もし追加発注する事ができたらその事もレポートしたいと思います。

 

思い込みは危険

商習慣やバックグラウンドが違うので「言わなくても分かるだろう」とか「たぶんこうだろう」的な思い込みは危険ですね。

見積書に掛かれていたスケジュールは「金型作成に12営業日、射出成型に3営業日」でしたが、DFMの承認を起点として土日が休みと考えると量産品を受け取ったのは25営業日後でした。

プロトラブズはきっちり期日までに納品してくることと比べるとスケジュールには余裕を持つのと、もし絶対にこの日までに欲しいという事であれば要望としてちゃんと伝えれば、聞いてくれるんじゃないかとも思います。

 

「コスパ」という考えは捨てる

最近はよく「コスパ(=コストパフォーマンス)が良い」などと聞く様になりました。cost performanceが外国で通じなかったので調べてみると和製英語だそうです。

考えてみると日本では安いものでも高いクオリティ(=コスパ)を求める傾向がありますが、海外では「良いものは高い」「安いものはそこそこ」という考え方が浸透しています。つまりコスパという概念は相容れないのです。

アリババの注文は安くてそこそこの物を買おうとしているのです。

安いところはいくらでも安いところがみつかりますが、安ければ安いほど品質も対応も悪いという認識を持つことがうまくいくためには大切です。外国の担当者が「日本人はお金を払わないのに文句が多い」と嘆いていましたが、日本のようなサポートが欲しいのであれば日本で相応の金額を払うべきで、アリババは向いていません。

皆様が安くてそこそこのものを手にする一助となれば幸いです。

 

追記:

Maker Faire Tokyoに参加させていただくと思った以上の多くの方に前回のレポート記事を読んでいただいていて驚きました。ありがたいです。何かの参考になれば!

 

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