個人が中国にプラスチック部品の量産を依頼した話1(AlibabaのRFQ編)

標準

 

個人がプラスチック部品を中国に発注してみようという話です。

安いとは聞いていますが不安もあります。「実際どうなの?」という所を実際に自腹を切ってやってみます。

 

 

僕が作っているもの

まず、僕が作っているのはこの↑スマホアプリで自由に光らせることができる電光掲示板みたいなLEDバッジです。

趣味(つまり個人の活動)で作っています。

このデバイス(LEDバッジ)は基板マトリックスLEDが重なった構造になるのですが、何もしないと隙間から中にある電子パーツが見えます。

このLEDバッジは「お客さんの表現を助ける」をコンセプトとしていて、お客さんの表現以外の情報はなるべく遮断したいのです。

そこでこの様なプラスチックの部品を作りました。

この様に基板とマトリックスLEDで挟むように閉じて固定します。

このスペーサーはもちろん既製品なんてありませんのでオーダーメイドです。

CADを使って設計図を作って、プロトラブズの射出成型で作ってもらっていました。

 

プロトラブズが合わなくなってきた

まず申し上げたいのはプロトラブズは本当に神サービスだという事です。

国内の多くの射出成型業者が軒並み「個人お断り」を掲げ、我々個人を犬畜生のように追い払っていますが、プロトラブズは僕のようなど素人の個人にもやさしく向き合ってくれます。

更に草の根レベルでも射出成型を啓蒙し、CADデータを送れば(何の打ち合わせもしなくても)成型可能or不可能や問題点を確認できたり、自動で見積が可能なインターフェースもあります。もちろん日本の業者さんなので日本語が通じ、日本の商習慣が通用します。初めて射出成型でもとっつきやすく控えめに言っても神サービスと言って良いでしょう。

しかしLEDバッジを多くの方に使っていただけるようにり、製造数が徐々に増えてくるとちょっとプロトラブズが合わなくなってきました

個人的な偏見に基づくグラフですが、1個~数十個くらいまでは3Dプリンタで作るのがコスト(金銭的、時間的に)メリットがあり、100個とかになると3Dプリンタでは間に合わなくなります。数百個くらいの製造だとプロトラブズは悪くありません。

その一方でプロトラブズは製造数が更に増えてもほとんどコストが下がりません(上図参照)

一般的な射出成型は金型作成に大金がかかりますが一度金型を作ってしまえばその後の製造はめちゃくちゃ安くなってきます。

 

ちなみにプロトラブズでもキャビティ数を増やして複数個取り(一回のプラスチックの注入で2個とか3個できる)を行えば、1個あたりのコストは抑えられるはずでした。(その分金型作成費用はかさみます)

しかし僕の部品の場合、プロトラブズから「複数キャビティにすると品質を維持できない」と断られてしまいました。

 

 

Alibaba(阿里巴巴).comのRFQを使ってみる

そこで今回初めてAlibaba.comのRFQ(Request For Quotation、見積をリクエスト)を使ってみる事にしました。

Alibaba.comとは、企業同士の商談仲介サービスです。

企業だけではなく個人でも利用できますが、最小発注個数(MOQ)があるので比較的大口の取引となります。

既製品の取引だけでなくオーダーメイドもできます。(以前Alibaba.comで電子部品をオーダーメイドした記事はこちら

RFQを使うには、まずAlibaba.comにログインした状態で上図のメニューの「Submit RFQ」を選択します。

入力画面が表示されたらこの様な内容を入力しました。(なお僕の英語は伝われば良い適当です。)

Dear Sir/Madam,
(ご担当者様)

Hello,
(こんにちは)

This is OKAMOTO Tomohiro with Japanese venture.
(日本のベンチャーの岡本智博です)

I am looking for a manufacturer that can make the plastic parts based on the following specifications.
(私は以下の仕様のプラスチック部品を作る事ができるメーカーを探しています)

* The material is White colored ABS.(白色のABS)
* small and thin(小さくて薄い)
* 〇〇pcs(〇〇個)
* I can provide CAD data(.iges/.step / etc.).(CADデータを提供できます)
* Plastic Modling Type :Injection(成型方式:射出成型)
* Application : electronic goods circuit spacer(用途:電子機器の基板のスペーサー)

Could you please give me a quote?
(見積をいただけますでしょうか)

I would appreciate your consideration.
(ご検討いただければ嬉しいです)

Thank you!

Best regards,
Okamoto Tomohiro

※このRFQには色々と不足がありましたので後で説明します。

 

まず取引をする相手がどんな人かという事が気になるはずなので最初にごく簡単な自己紹介を入れています。個人の趣味なのにventureとか書いているのはどうなのかなとも思いますが上手い説明が見つかりませんでした。

RFQにはファイルを添付する機能もありますが画像しか添付できなかったので、CADデータの代わりに部品の形状を画像にしたものを添付します。

あとはプラスチックの材質(今回はABS)、製造個数、用途など仕様を記載しています。

 

全く見積が来なかったらどうしようと不安です。

 

怒涛の見積ラッシュ

そんな心配をよそに、

RFQを送信するとものの30分くらいで十数件の見積が次々と集まってきます。

なおRFQの前にAlibabaでめぼしい企業を調べていたのですが、その企業からは来ていません。

一様に「CADデータを送ってくれたら正確な見積を送ります」という内容でした。形式はSTEPファイル形式(.step/.stp)で送ってくださいと言う所がほとんどでした。

 

なお、CADデータについても業者が製造しやすいように抜き勾配(金型からプラスチックが剥離しやすいように傾斜をつける)を付けたり、プラスチックが流れやすい形状にしたり多少改良しています。

製造しやすい方が、より見積が安くなったり、より品質が安定すると思います。

 

あとで調べたらRFQにもZIPファイルは添付できるみたいでした。STEP形式のファイルをZIPで圧縮してRFQで送る事はできた様です。その方がスムーズです。

僕がすごいと思ったのは↓これ。

めちゃくちゃ流暢な日本語で送られてきました。ここに頼めば英語もいらないですね。

 

そしてAlibabaのシステム経由だけじゃなくて僕のメールにも直接たくさん来ています。(これAlibabaの規約的にどうなんだろう…)

 

そしてなぜかFacebookのメッセンジャーにも。

僕はAlibabaに名前くらいしか登録していませんでした。たぶんFacebookで名前検索して来たということだと思います。

全国のオカモトトモヒロさんに中国から見積が届いたかもしれません。

 

ちなみに、なぜメールやFacebookに来るかというと多分、RFQに見積を提出できるのはAlibabaの業者の中でもAlibabaにお金を払っているゴールドサプライヤーだけだからだと思います。

また、Alibabaを経由せずに取引をすればAlibabaに手数料を取られずに済むからじゃないかと思います。

 

なお当然ですがAlibabaを経由しなかったらAlibabaの消費者保護が受けられません。サプライヤーは執拗にAlibaba外での取引を持ち掛けて来るので注意が必要です。

「STEPファイルを送ってくれたら見積もりします」に対しての僕の返答はこちら。

Dear *****,

Thank you for your reply.
(返信ありがとう)

Enclosed is the STEP file.
(STEPファイルを添付します)

Please check it. And Feel free contact me if you have any questions.
(確認して質問あったら聞いてください)

I would appreciate it if you could give me a quotation.
(見積をいただけると幸いです)

Thank you!

Best regards,
Okamoto Tomohiro

 

その後、Alibabaのメッセンジャーにはこんな追加の質問も。

(正確な見積のために確認させてください。〇〇個はあなたの年間個数ですか?製造個数が少ないとコストが高くなります)

 

(必要なのはたったの〇〇個ですか?)

大企業に比べると製造個数が少ないのは致し方ありませんが、なかなかの煽ってくるスタイルです。

 

最初の製造個数と、年間の見込み製造個数をRFQの段階で伝えていたらもっとスムーズだったかもしれません。

 

あと、このように表面処理についても確認してくれる業者さんもいました。

Matteは「光沢なし」、Polishは「鏡面仕上げ」です。Textureはよく分かりません。磨きの工程が必要なPolishのほうが高いと思います。

これもRFQの時点で予め伝えていた方がスムーズだったなと思いました。

僕はPolishである必要はないと思うのでMatteでお願いしました。

という事でRFQで伝えた方が良いと思った事をまとめると、

  • 簡単な自己紹介
  • CADデータ(STEP形式をZIP圧縮)
  • プラスチックの種類(ABS、PPなど)
  • 初回製造個数
  • 年間製造見込み個数
  • 表面処理(Matte、Polishなど)
  • 何に使う予定か

なお、Alibaba.comではRFQを出すだけなら無料です(※有料のオプションもあります)。

 

最終的な見積比較

という訳で、集まった見積連絡の中から心配な感じの業者さんはスルーしつつ、最終的に見積が確定したのは以下の3社です。(STEPファイルを送っても返事がなかった業者もありました)

条件が違うので一概に比較ができませんが、プロトラブズの金額とを比較しています。

日本語 金型費用 パーツ単価 納品日
(営業日)
A社 × 1.30倍 0.11倍 15
B社 × 4.25倍 0.14倍 44
C社 1.34倍 0.04倍 25~45

さすがは中国ですね。パーツ単価は総じて安いです。金型費用も全然許容範囲です。

B社の金型代は高くてビックリしましたが、見積条件で唯一表面処理がPolishだったからかもしれません。

A社は納期がかなり早く金型代はやや安いです。C社は少し金型代が割高ですがパーツ単価が圧倒的に安くなり担当者さんは流暢な日本語で安心感があります。

単価を下げるには血のにじむ様な努力が必要ですのでC社は魅力的です。正直この条件ならC社一択だと思いますが、今回はA社にお願いする事にしました。

A社の担当者のチェンさん(仮)は確認も丁寧でしたしレスポンスも早かったので信頼できそうでした。

A社、B社はすぐ見積もりが届きましたがC社は一週間くらいかかりました。

 

B社とC社には以下の様にお断りの連絡を入れておきます。

Dear Mr./Mrs. 〇〇〇〇,

Thank you for your quotation.
I am sorry but, I decide to order from another company.

I really appreciate your cooperation.
And I am looking forward to working with you in the near furtuer.

Thank you so much.

Best regards,
OKAMOTO Tomohiro

 

A社には依頼に際し50%のデポジット(前金)を支払います。

 

DFMの確認

デポジットの入金が確認されると数日後にDFM(Design For Manufacture/製造容易性設計)が送られてきます。なぜかパワーポイント形式(.ppt)で。

プロトラブズで一度製造しているので製造不可能の個所はありませんでした。

 

パーティングライン

↑まずはパーティングラインの位置の確認画像。

パーティングラインとは金型が噛み合わさる位置で、金型同士のわずかな隙間に溶けたプラスチックが入り、完成品にはわずかに線が入るかもしれません。

しかし今回はすべてのパーティングラインはカドに配置されているのでほぼ気にならないんじゃないかと思います。

 

ゲート位置

↑つづいてゲート(溶けたプラスチックを流し込む注入口)位置の確認画像です。

製品が冷えた後、ゲートの場所で切り落とすので跡が残るはずです(プラモデルを作った事がある人ならお馴染み)。こちらも完成後にどうなったか確認したいと思います。

この部品では上図の右上の部分が細かくて圧力が伝わりにくいので、近い場所にゲートを置いたのかなと想像します。

ちなみにプロトラブズではゲートは3か所(左右に1か所づつ、右上部分に1か所)で提案を受けました。A社はプロトラブズより圧力が高いのかもしれません。

 

エジェクタピン

エジェクタピン(冷えて固まった製品を押し出して型から取り出す棒)の位置の確認。

エジェクタピンで押し出された製品は、まだ完全には冷え固まっていないために、その場所がわずかに凹みます。

しかし、この位置なら回路基板とマトリックスLEDで隠れますので全く気にならないはずです。

これも出来上がったら確認したいと思います。

プロトラブズのエジェクタピンは20か所で提案を受けていましたので、A社はずいぶん少ない印象です。エジェクタピンが少ないと取り出し時にゆがみになったりするかもしれません。こういうところが値段に影響しているのかもしれません。

 

ヒケ

最後に、この赤くなっているところは通常より部品に厚みがある部分だそうです。プラスチックは冷える時に収縮しますが、赤くなっている部分は厚みがあるので完成品が少し凹むヒケ(=sink)の可能性があるよと確認してくれています。

この部分は基板とマトリックスLEDで隠れてほぼ問題はないと考えています。厚みを出す事でプラスチックが流れやすくなって製造しやすくなる(=品質が良く、安くなる)のではと考えました。

 

DFMに問題はないと思いましたのでこんな感じ↓の返信を行います。

Dear Mr.Chen(仮)

Thank you very much for your confirmation.

> A risk of sink mark on red areas, please confirm is it ok?

No problem as it will be hidden by the circuit board.

I agreed this DFM

Please proceed with this.

Thank you.

これにより製造が開始されるようです。

 

まだちゃんとしたものが出来上がるか分かりませんし、隠れた追加費用を言われたりするかもしれませんが、とりあえず完成するまで待ちです。

続きます。

 

 

個人が中国にプラスチック部品の量産を依頼した話1(AlibabaのRFQ編)」への2件のフィードバック

  1. akira

    たまたまこちらのサイトが関連記事にでてきまして読ませていただきました。
    日本で金型を製造しているいち社員です。
    今後の展開も楽しみです(´▽`)
    表面処理Textureはもしかするとシボ加工を指してるかもしれませんね・・・

    • オカモトラボ オカモトラボ

      AKIRAさん
      わっ!プロの方に見ていただけるなんて!
      Textureの情報ありがとうございます!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です