~~~~前回までのあらすじ~~~~
僕がHicarix Badgeというオリジナル同人ハードウェアを作って売り始めた矢先、必須パーツが入手できなくなるという事態が眼前に迫っていた。
このまま何もしなければせっかく作った同人ハードは座して死を待つだけである。
国内の代理店はコピペしかのように個人お断りの表記を掲げ、一縷の望みはAlibaba.comであった。
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ドラマチックに始まりましたが、
要は、僕は個人で↑このスマホで自由に光らせることができる電光掲示板みたいなLEDバッジを作っています。
それには↓このマトリックスLEDという、LEDがマトリックス状に並んだ部品が不可欠です。
これはそれまで秋月電子で買っていたんですが、遠からず生産終了になる可能性が出てきたのです。
このマトリックスLEDを前提に基盤を設計したり、↑ピッタリハマるようなカバーを生産するプラスチック金型も作っていました。
基盤は設計しなおせば良いんですが、金型は作り直すとまたすごくお金がかかりますし、僕が使っていたマトリックスLEDは薄いタイプで、ネットで既製品を探しても薄いタイプは見つける事ができません。
Alibaba.comを使って探す
Alibaba.comは中国の企業同士の商談仲介サイトです。Alibaba.comで代替できるマトリックスLEDがないか探します。なお僕に海外からパーツを仕入れた経験は皆無です。
最初は会員登録せずに探していたのですが、途中で会員登録を済ませ「matrix led 8×8」などと検索して代替既製品がないか探していました。
そうするとある日メッセンジャーにサプライヤーからこんなメッセージが。(Alibaba.comにはメッセンジャー機能がある)
(こんにちは、8×8のマトリックスLEDを探していますか?)
僕は会員登録をした後ただ検索をしていただけです。多分Alibaba.comでは会員登録した人が「何を検索したか」がサプライヤーに開示されてしまうのだと思います。日本的な感覚だと結構すごいことですね。僕の場合、結果的にすごく話が早かったので合理的なのかもしれません。
正直なところ、僕も全く”あて”がなかったので、この最初に声を掛けてくれたサプライヤーと担当者さんと話しを進めることになりました。
Alibaba.comでの取引の流れ
この担当者さん(仮にウーさん)は「こういうのが作れるよ」という感じでデータシートを送ってくれます。当然のことながら僕が欲しい仕様のマトリックスLEDではありませんでした。
逆に「こういうのって作れるの?」とファイルを添付して質問してみることに。ファイルは寸法と配線図と外観を含むJPGファイルです。
ちなみに僕は全くの個人なのですが、一人称を「We(私たちは)」として会社っぽさを出しています。
なんですかねこの見栄…。
でもこの無駄な見栄はあんまり意味がなくて、日本だと個人は企業に相手にされない事も多いですが、中国では個人だろうがちゃんと向き合ってくれるのだと後で悟りました。
そんな無駄な見栄を見抜いていたのかどうなのか分かりませんが、
(あなたのための金型を作ります。金額は…)
サプライヤーは金型の作成を快諾。
マトリックスLEDの金型作成代が初期費用でかかりますが、一度作ってしまえば単価も秋月電子で買うよりかなり安くなります。
それに対する僕からの返事は↓のような感じ。
(見積はOKです。金型を作る前のCADデータをチェックできますか?あと最初はサンプルとして30個づつだけ注文したいです)
金型の作成前にCADデータをチェックしたい旨を伝え、最初は少ないロットから注文したいと言います。
正直なところ、まだこの時点ではちゃんとしたものが出来ない可能性もありました。金型は作り直しが利かないですし寸法が違えば目も当てられません。
この時にすっかり忘れていたのですが、MOQ(最小発注個数)もこの時点で確認しておくべきでした。今回の場合は特に問題は起きませんでしたが、場合によっては揉めるかもしれません。
ウーさんも最初は少ないロットでと言う僕の要望に、当然そうした方が良いでしょうと理解をしてくれました。
ウーさんは送ったJPGファイルに不明瞭な点があると一つ一つ確認してくれて、とても丁寧です。
メッセンジャーでやり取りをし、仕様や金額が固まれば「ORDER」画面を作成してくれて支払います。
支払いはクレジットカードでできるので全く問題ありません。おそらく支払ったお金は一旦Alibaba.comがプールしておいて、受け取り連絡するまではサプライヤーには支払われない仕組みだと思います。
利用者の不利にならないように徹底していますし、使いやすい様すごく作りこまれた神サービスです。
その後のやり取りで僕が分からなかったのがこれ。
(CADデータをチェックして問題なければsignしてください。一度signするとデザインに承諾したことを意味し、その後の変更はすべてあなたの責任になります)
ここだけ画面が違うのはメールで送られてきたからですが、基本的にサプライヤーとのやり取りはAlibaba.comのメッセンジャーでやるべきです。そうして履歴を残しておけば万一のトラブル時にAlibaba.comが保証してくれるみたいです。
僕は文中の「sign」の意味が分かりません。電子署名?Alibaba.comのシステムにそういう機能がある?など色々考えます。
わからないので聞きます。
(「問題なければsignしてください」の意味が分かりませんでした。デジタル署名のことですか?)
(印刷してサインしてください)
思ったよりアナログな方法で拍子抜けしてしまいました。
このやり取り、後から考えると本当に馬鹿馬鹿しいんですが、CADデータには本当に電子署名みたいな機能もありますし相手は全く商習慣やバックグラウンドが違う相手なので本当に分からなかったんです。
印刷してサインしてスキャンして画像データにして送り返しました。
(確認しました)
ちなみにCADデータの配線もちゃんと追いかけて全て確認しました。
このsignによりサンプルが生産されます。
CI(Commercial Invoice)の確認
サンプルの生産が完了すると今度はCI(Commercial Invoice)を確認してくれという連絡が来ます。
CIは税関が確認する書類で、これにより荷物の中身や金額やそれによる税金の算出などをおこないます。CIに間違いがあると通関できないのでしっかりと確認が必要です。
(CI確認して問題ありませんでした)
そうするとサプライヤーは荷物を発送して数日後には荷物が届きます。その時に宅配のお兄さんが代引きと同じ要領で内国消費税(と場合によっては関税)を請求してくる事があるので支払います。
内国消費税とは外国で買った商品が、ある程度以上の金額になると日本で買ったのと同じ日本の消費税がかかるのです。(少額ならかからないみたい)
届いたダンボールを開けるとこんなのが入っています。
ビニールテープでグルグル巻き。
その箱を開けると仕マトリックスLEDが届きました。
寸法も完璧でこれを基盤に取り付けてちゃんと点灯したときはちょっと感動しましたね。
サンプルがOKなら量産を依頼します。
量産とは言っても個人の同人ハードなのでたかが知れています。数百程度なのですが、快く引き受けてくれました(MOQに足りなかったのでちょっとだけ追加費用はかかりましたが、そんな法外な金額でもなく、MOQ以下だと引き受けてくれない日本の代理店より随分良心的でした)
金型作成にはそれなりにかかりますが、ある程度の量が見込まれる場合は個人でAlibaba.comを使うというのは選択肢としてはアリだと思います。
軌道に乗ったらとか、必須パーツが入手不能になるときには検討してみても良いと思います。
担当者のウーさんがデキる人で助かった部分も大きいです。ウーさんはいつ寝てるの?ってくらいいつでも返信がきます。
今回は事なきを得ましたし、結果的には仕入れコストも圧縮でき、言わば怪我の功名といったところでした。
ソフトウエアの開発では気にしませんでしたが、ハードを作って売るとこの様な調達の難しさも身にしみます。
何かのご参考になれば。